研究内容

ATTRアミロイドーシスの創薬研究

~遺伝性難病に対する創薬をめざして~

遺伝性ATTRアミロイドーシス血清タンパク質であるトランスサイレチン(TTR遺伝子変異により発症する疾患です。変異TTRより形成されたアミロイド線維が神経を中心に全身諸臓器沈着することで障害をきたします。従来は、TTRの主要な産生臓器である肝臓を置換する肝臓移植が唯一の有効な治療法でありました。近年では、アミロイド形成を抑制するTTR四量体安定化剤やTTR産生を抑制するsiRNA医薬が開発され、本症の生命予後は改善しつつあります。しかしながら、本疾患の発症に関わる分子機構については未だ多くの謎が残されています。

 変異型TTRは生後から産生され続けるのにも関わらず、アミロイド沈着は一般的に壮年期以降にしか起こりません。また、同一の遺伝子変異であっても、国や地域によって発症年齢や病態が異なることが知られています。さらに、野生型TTRも加齢に伴いアミロイド線維を形成して野生型ATTRアミロイドーシス (老人性全身性アミロイドーシス)の発症原因となります。これらの特徴的な病態を示す背景には、本疾患の発症が遺伝的要因だけでなく、加齢に伴う環境要因の変化によって制御されていることを示唆しています。しかしながら、加齢に伴って変化するどの環境要因がどのようにTTRのアミロイド形成を制御するのかは明らかになっていません。 

 私たちは現在提唱されているTTRアミロイド形成機構を独自のアプローチを用いて再検証したところ、アミロイド形成過程で生じる新たな中間体を発見しました。現在は、新規中間体の構造および機能解析、その形成を制御する環境要因の探索を行っています。TTRのアミロイド形成に発症に関わる環境要因を同定できれば、生活習慣の改善等による野生型ATTRアミロイドーシスの発症予防も可能であると考えられます。

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