研究内容

タンパク質工学で自然の摂理を明らかにしよう

~タンパク質の構造と機能の関係を解析する~

PCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen;増殖細胞核抗原)というタンパク質があります。これは、DNAの複製や修復に関与するタンパク質です。また、細胞周期の調節にも関わっています。PCNAはDNAの上に存在し、DNAに作用するさまざまな酵素の足場として、酵素のはたらきを促進します。

病気の多くは、DNA複製や修復、あるいは細胞周期の異常により引き起こされます。これらに関与するPCNAの構造と機能の関係を明らかにすることは、DNA合成というしくみを明らかにするとともに、さまざまな病気を解析する研究にも役立ちます。

PCNAはその独特な構造と機能から「スライディング・クランプ(sliding clamp)」と呼ばれるタンパク質の仲間です。クランプとは、棒状のものを固定するリング状(またはコの字形、C字形)の部品や工具につけられた名前です。PCNAはリング状のタンパク質で、DNAの二本鎖は中央の穴を通っています。DNAの複製や修復が起こる時、PCNAはそれぞれの機能に関与するタンパク質と結合し、輪の中にあるDNAに沿ってスライドしながら結合したタンパク質がはたらくのを促進します。<下図参照>

research_img06.jpg
(a)PCNAのリング構造
PCNAにFEN-1というDNA切断酵素が結合している複合体の
立体構造(X線結晶構造解析)。中央のリングをDNA二本鎖が
通り、PCNAはDNA上をすべるように動く
research_img07.jpg
(b)スライディング・クランプ
PCNAに結合したFEN-1がDNAを切断するイメージ図。
FEN-1は、二本鎖DNAから一本鎖DNAが枝分かれした部分を
認識して、その部分を切り落とすはたらきをする。

わたしたちのグループでは、これまでPCNAのさまざまなアミノ酸に変異を導入し、その機能の解析を進めてきました。最近、PCNAのリングの内側にあるいくつかのアミノ酸の変異を導入して、DNAの上での動きが遅いPCNA変異体を作製しました。動きが遅いという性質から、これまで困難だった解析が可能となってきています。(1)速度論的な解析、(2)水溶液中での解析(蛍光相互相関分光法;FCCS)、(3)ゲルモビリティシフトアッセイおよびフットプリンティングアッセイ、(4)蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)による解析など、さまざまな分析手法を駆使して、自然の摂理に迫ります。

Page Top